ConceptSIMPLE Inc. 11のコンセプト

上と下と北と南と

シンプルな家のための、長いはなし⑨

上と下と北と南と

主婦目線で家を考えた時、気になるのは家事動線ではないでしょうか。実際、同じ家事であっても動線が違えばその労力はグンと減らすことができますし、これが毎日のこととなれば積み重なる負担の違いはかなり大きくなります。

そこまでわかっていながら、いまだに多くの人が最初から家の間取りを「2階建て」、つまり階段の上り下りに家事を阻まれること前提で考えてしまっているのは、とても不思議なことです。

というのも、家事のうちで肉体的に大きな負担を強いられるのが洗濯です。脱衣所に置いた洗濯機から濡れた重い洗濯物を取り出して、階段を上がって物干し場となる2階のベランダまで運ぶ…。考えただけでもウンザリしてしまう重労働ですね。しかし家を平屋にするだけで、この苦労は簡単に無くすことができます。

水回りと物干し場のレイアウト自体も、もっと考えなければいけません。物干し場は日当たりの良い南側や西側に配置されますが、水回りはリビングなどの日当たりを優先させた結果として日の当たらない北側に追いやられることが一般的です。こう書いただけでもお互いが家の最も遠い場所、正反対に位置していることが想像できるでしょう。こんなレイアウトにせざるを得ないのは、南側の窓からしか光を取り込めない従来の間取りを採用した家の宿命といえます。

そんな無駄に長く険しい移動を「最良の家事動線」と呼ぶことはできません。若いうちはなんとか我慢できるかもしれませんが、何十年か後に足腰が弱ってきたあなたが、その負担に耐えられるでしょうか。それならば平屋の家を建てて、中庭などを利用することで明るい物干し場と脱衣所の距離を近く・平坦にまとめるほうが、よっぽど現実的ではないでしょうか。

『SIMPLE Inc.』の建てる家は、中も外もその名の通りシンプルな見た目が大きな特徴です。しかしそれはデザインを優先した結果ではなく、使い勝手やコスト、そして将来の暮らしまでをも見通した結果であることを、どうか忘れないでください。

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